暗渠のはなし

*スタッフ日常2018/9/7

先日の台風では長野県内も久しぶりに各地で被害が発生しました。
暴風雨による雨漏りの発生や屋根の一部が捲れ上がったなどという被害の修繕要請が、
台風がまさに通過している時点から台風一過の翌日にかけて、
会社の電話やEメールに相当数ご連絡を頂戴しました。
工事部やアフターメンテナンスを預かる部署ではその対応に追われているところですが、
皆様の御宅はご無事だったでしょうか?
リフォーム設計担当の高松です、こんにちは。
 
さて、今日は暗渠について。
皆さんは暗渠というとどんなイメージありますか?
暗渠は簡単に言うと「地中に埋設された水路」のことを言いますが、
私たちの暮らすまちにはこの暗渠がいたるところに存在しています。
暗渠のスタイルもじつはいろいろあって、
普通に上から蓋を被せただけの分かりやすいタイプのものから、
なかにはそこに水路があること自体気づかれないような暗渠まで、じつにさまざま。
もしかすると皆さんの暮らす地区にも、「えっ? ここに暗渠があるの!?」
ってところがあるかもしれません。
暗渠が暗渠となってしまった理由はいろいろですが、
一般的にはそこに水路があると何かと不都合が出てしまったため
蓋をしたり地中に埋設されてしまったというのが大半です。
が、なかには例外的に、普通の河川だったものが別の用途に使用されるため
暗渠化されてしまったというところもあったりします。
その代表格たる暗渠を先日歩いてきました。
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場所は東京、表参道から伸びる一本の道。通称、キャットストリート。
現在、若者向けのブティックや飲食店が立ち並ぶキャットストリートという街路は、
じつは渋谷川という立派な河川の一部を暗渠化したものだったという話、
人気まち歩き番組、NHK「ブラタモリ」はじめ、多くのメディアで紹介されているので、
ご存知も方もいらっしゃるかと思いますが、
現地を歩いていると、なるほど道の程よい蛇行具合だとか、
メインストリートの脇に不自然な姿で並行して走る小路があったりと、
その様子はまさに河川のそれという感じです。
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ストリートの入口にあたる表参道沿いには、
かつてここに川があったことを証明する「参道橋」という
橋の欄干がいまもなおモニュメントのように残されています。
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CIMG1363 - コピー
このキャットストリート=渋谷川の暗渠というのは、
かつて東京オリンピック(2020年のほうじゃなくて1964年のほう)開催の折、
外国から選手や観客を迎え入れるためにトイレの水洗化が緊急課題となり、
新設の追い付かない下水道整備の一環として、既存の河川である渋谷川を
下水道に転用してしまえということで、川に蓋をして下水道化してしまったとのこと。
もともとオリンピック前から周辺の生活排水などが垂れ流されるどぶ川状態だった
という話もあり、オリンピックだけが暗渠化された理由ではないのかもしれませんが、
いっぱしの河川を下水道化してしまうという大胆な発想、
半世紀も前の東京って、現在以上に大胆な発想で都市を改造していたのですね。
なんにしても、暗渠というのはまちの歴史のなかでもいろいろな物語を秘めている、
ある意味において「見えない風景」の代表格のような存在です。
まち歩きをしていても、ときどきふと「あ、これってもしかして暗渠?」
と感じるような街路に出くわすこともしばしあったりします。
世の中には暗渠マニアという人も存在して、
暗渠巡りを楽しむためのガイド本まで出版されていという。
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僕自身はマニアというわけではないですが、
それでも暗渠を辿るまち歩きはけっこう好きです。
暗渠の路地にはまちの歴史があり、そこに住まう人々の生活の一部が垣間見えます。
暗渠のある風景を探訪しつつ、まちとの関わりをこれからも楽しみたいと思います。